B2Bデータ連携・統合とは 部門の使用例 技術・ビジネスの課題 影響や効果
航空宇宙、自動車、ハイテク、工業生産部門の大企業の年間購買額は数兆ドルに上ります。購買の大半を占めるのは、製品を生産するために工場に納入される原材料、構成部品、完成品です。売上高約6,000億円規模のメーカーであれば、年間に数十万件の発注を行うのは珍しいことではありません。
各注文をそのライフサイクル全体(確認、変更、変更の確認、納入、請求、支払)を通して管理するには、多くの作業負担が伴います。たとえば、購買マネージャの多くは、注文がサプライヤによって確認されたかどうかを把握できていません。そのため、購買担当者はサプライヤに電話をかけ、要求した数量の商品が希望納期に指定納品場所に配送されるかどうかを調べなければなりません。
さらに、発注がサプライヤにFAX、電子メール、電話で伝えられる場合にも課題が発生します。判読できないデータをサプライヤ側のセールスチームが推測し、独断で欠落したフィールドを埋めたり、在庫切れ品目に代替品をあてがったりすることがあります。注文入力プロセスでのこうした無断の「穴埋め」行為は、注文履行品質低下の原因となります。
このような管理上の課題の多くは、EDIやXMLなどのB2Bデータ連携・統合テクノロジーによって解消できます。電子注文書は、サプライヤの注文管理アプリケーションに電子的に送信されてすぐに直接処理されます。電子注文確認が購買担当者に返送され、サプライヤが指定条件に基づいて注文の一部または全部を履行可能であることが通知されます。
スーパー、デパート、ホームセンターなどで扱っている商品のほとんどは、発注と支払にB2Bデータ連携・統合テクノロジーが使用されています。ただし、発注するには、商品企画(マーチャンダイジング)担当者が各店舗で販売する商品の構成を決めなければなりません。これを決めるために、仕入れ担当者は納入業者から仕入れ可能な商品を把握する必要があります。
納入業者が提供する商品の品揃えは、1年を通して見ると頻繁に変動することがあります。デパートの仕入れ担当者がアパレルメーカーの最新カタログを参照できないと、昨シーズンに販売が停止された色、スタイル、サイズの商品を発注してしまうかもしれません。ミスが判明するまでに時間がかかれば、主要な商品ラインの欠品を食い止められずに収益に影響が及ぶおそれがあります。さらに、納入業者が「代替品」を納入した場合、小売店のニーズを満たせずに返品される可能性もあります。
スーパーの商品企画(マーチャンダイジング)部門が、各SKUの価格と梱包構成を正確に把握できない場合にも、問題が発生するおそれがあります。たとえば、仕入れ担当者が100パレットのスープを1缶あたり単価100円で発注したとします。一方で納入業者は、原材料価格の上昇により単価を1缶あたり125円に変更し、さらに梱包単位を以前出荷したときのパレットあたり450缶からパレットあたり500缶に変更していました。この小売店では予定数以上の商品が入荷し、仕入れ単価も上がってしまいました。このような場合は、小売店と納入業者の間で、納入業者が実際にどの程度の費用を負担するかを時間をかけて決めなければなりません。
B2Bデータ連携・統合ソリューションを導入すると、提供する商品が記載された電子カタログを納入業者から小売顧客の商品管理システムに直接送信できます。技術的には、この電子カタログ交換を「データ同期」と呼びます。電子カタログ交換により、販売が終了した商品を発注したり、価格や梱包の不一致が発生したりする確率が低くなります。マーチャンダイジング部門の仕入れ担当者は、納入業者の最新カタログに基づいて電子的に発注をかけることができます。
サプライチェーン内を移動する在庫は、1か所以上の倉庫で中継されることがあります。小売企業が運営する流通センターでは、仕入先からの出荷を受け入れて各店舗に配送します。メーカーが運営する倉庫では、工場から完成品を受け入れて顧客に配送します。
大手の小売企業やメーカーが複数の倉庫で1日に数万件の荷物を処理するのは珍しいことではありません。そのため、入庫する荷物と出庫する荷物の追跡に伴う管理負担を最小限に抑えてコストを削減することが不可欠になります。また、各荷物をできるだけ迅速に入庫および出庫することも重要です。
倉庫内にある各品目は、所有者のバランスシート上の運転資本に関連する棚卸資産に相当します。入庫担当者の多くは、倉庫業務を効率化しようとしていますが、いつどの荷物が到着するかがわからないために苦労しています。次の木曜日にどの荷物が到着するかわからなければ、トラックから荷下ろしをする作業員の数を判断しようがありません。いつどの荷物が納品されるかわからなければ、どの生産ラインを動かすか、または店舗でどの製品の販売促進を行うかを決めることは困難です。
作業員が工場で待機しているのに、原材料が届かず、生産ラインが停止したままならば多大なコストが発生するおそれがあります。また、店頭在庫のない商品を宣伝すれば、顧客の信頼を損ないかねません。最悪のケースが生じるリスクを小さくするために、多くの企業はサプライチェーン内(およびバランスシート上)にバッファ在庫を持っています。
バッファ在庫を持たないと、直前になって欠品を回避するために割高の輸送料金を払って緊急配送をしなければなりません。こうした可視性に関する問題の多くは、EDIなどのB2B(企業間)データ連携・統合テクノロジーによって解消できます。サプライヤは事前出荷明細通知を倉庫システムから直接顧客の倉庫管理アプリケーションに送信できます。顧客は、何日にどの荷物がどの輸送業者を使用して到着するかを荷物の内容も含めて把握できます。これにより、受入チームでは適切な作業員の手配や生産計画が可能になり、バッファ在庫を減らすことができます。
多国籍企業は、年間数百万件もの請求書をサプライヤから受け取ります。請求書には、購入した原材料、構成部品、完成品などの「直接材料」の購入に対するものや、人材派遣や委託サービス、コンピュータや事務用品、さらには保守、修理、営業費などの「間接材料」に対するものがあります。
従来、請求処理は、その書類作業の多さから大企業でも非効率な領域でした。しかし最近、複数の国で請求書の電子的処理を許める規制が導入され、コスト削減の大きな機会が生まれました。
これまで請求書は郵送か電子メールで受け取られてきました。つまり、請求書を印刷し、買掛金管理システムに再入力しなければなりません。注文書の「送金先住所」や「総勘定元帳コード」のような特定の重要なフィールドが抜けていれば、会計担当者がサプライヤに電話をかけて追加の情報を入手する必要があります。すべての請求詳細が収集された後、さらに検証しないと支払は承認されません。
通常、請求書は元の注文書および倉庫納入記録と照合する必要があります。会計担当者は、請求書の内容が実際に注文され、納入されたものと同じであることを確認しなければなりません。食い違いがあれば、購入者とサプライヤが一緒に正しい支払額を究明する必要があります。
B2B(企業間)データ連携・統合テクノロジーを利用して電子インボイスを導入すると、事務処理コストの大幅削減が可能になります。請求書は電子的に送信され、購入者の買掛金管理システムに直接入力されます。この請求書は自動的に検証され、対応する納入記録および注文書と照合されて不一致がないか確認されます。その後、請求書が承認プロセスを通過してから支払が許可されます。
このプロセスが速やかに行われるために、請求支払を早めることができます。通常、購入者は、早期支払と引き替えに、かかった運転資金を反映して請求額の割引を要求します。
企業は、規模に関係なく、定期的に支払を行う必要があります。購入した物品やサービスに対するサプライヤへの支払もあれば、従業員への月給の支払もあります。今日、多くの企業は、現金や小切手ではなく口座振込で支払を行っています。また、電子的な指示書を使用して銀行に支払先、支払日、支払金額を通知しています。
EDI、XML、SWIFTなどのB2B(企業間)データ連携・統合テクノロジーによって、企業は電子的な支払指示書を銀行に直接送信できるようになりました。これにより、事務処理コストを削減し、不正行為が発生する可能性を抑えることができます。企業は、特定の日に行うすべての支払のリストを含む日次ファイルを銀行にアップロードします。その情報を受け取った銀行は、さまざまな支払チャネルを使用して電子的に送金を行います 緊急で高額の支払には電信送金が使用され、それ以外の支払には通常、ACH(自動決済機関)システムが使用されます。
企業はまた、消費者や他社などの顧客から売掛金を回収する必要があります。こうした入金のほとんどは、オンライン請求支払サイト、クレジットカード、または電子送金を介して企業の銀行口座に対し電子的に行われます。当然、企業は入金に関する情報を知る必要があるため、このプロセスで重要な部分は、銀行が顧客の売掛金管理グループに毎日処理した回収についての報告を送信できることです。
この銀行の報告プロセスには多様なB2Bデータ連携・統合テクノロジーを使用できます。EDI、XML、SWIFT、BAIなどの標準を利用して売掛金処理に伴う事務処理コストを削減することが可能です。経理担当者が入金をそれぞれ総勘定元帳に入力するのではなく、その日の入金情報ファイルを1つ銀行からダウンロードして企業の売掛金管理システムに直接アップロードできます。
大規模な多国籍企業は通常、世界100か国以上に数千もの銀行口座を持っています。各国の口座は、その国のサプライヤ、従業員、投資家、退職者、政府機関への支払や、政府機関、法人顧客、小売顧客からの売掛金回収に使用されます。
企業で支払の支出額を回収額が上回った場合を考えてみましょう。その企業では日次締めで余剰現金が発生し、財務部門がそれを最適利用に回します。ほとんどの場合、余剰現金は翌日物金利の付く口座に投資されます。
手元資金すべてを利用して営業日の締め時には各口座をゼロバランスにするのが、企業にとって理想的な状態です。今度は、企業で売掛金の回収額を支払の支出額が上回った場合を考えてみましょう。その企業では日次締めで現金不足が発生し、財務部門が資金を調達しなければなりません。大抵は銀行の与信枠内で借入を行うか、資本市場で資金を調達します。財務担当者が現金不足になりそうだと早めに判断できれば、その分時間的余裕を持って資金を手配でき、通常は調達コストも低く抑えることができます。現金の余剰または不足を判断するには、正確な口座残高データを各銀行口座から取得できなければなりません。
従来、財務担当者は、Web、電話、FAX、電子メールを使用して個々の銀行からデータを収集していました。この手動によるデータ収集プロセスは時間がかかり、投資や借入を決定するのに必要な情報の収集が遅くなります。B2B(企業間)データ連携・統合テクノロジーを利用すると、企業の財務部門は、各銀行から口座残高情報を自動的に取得できます。口座残高情報は、電子的に財務システムに直接取り込まれ、現金持ち高の自動予測に使用されます。日中および日次締め時の残高情報は、XMLやSWIFTなどの統合標準を使用して取得できます。